アメリカは左の民主党、右の共和党による2大政党制ですが、州によって支持政党が違います。
例えば私が通算で17年ほど住んでたカリフォルニア、そして4年ほど住んだニューヨークはどちらも民主党支持の人が共和党よりも多く、青い州(青は民主党の色)と呼ばれます。
逆に現在私が住んでるフロリダは、その昔はどちらも拮抗していてスウィング・ステート(どっちに転ぶかわからない州)と呼ばれていたのですが、ここ数年で共和党支持が民主党支持よりも多い赤い州(赤は共和党の色)となりました。
ただ、民主党の州、共和党の州と言ってもそんなに単純ではありません。
というのもカリフォルニアの場合、州のパワーセンターであるメディアの中心地ロサンゼルス、そしてテックの中心地シリコンバレー(サンフランシスコ、パロアルト、サンホゼなど)といった地域では圧倒的に民主党支持の比率が多いです。
その中でも少し異常とも言えるほどに民主党支持によっているのがサンフランシスコだったりします。有権者として登録する際書かれた支持政党の比率で見ると、サンフランシスコの場合は民主党支持(青)が56%ほどです。
さらに民主党と共和党だけに絞ってその比率を見ると、サンフランシスコの場合民主党支持(青)が90%ほどに対して共和党支持(赤)が10%ほど。つまり、サンフランシスコで共和党を支持している人1人に対して民主党支持の人が9人もいるという状況で、共和党支持の人はものすごいマイノリティということになります。
アメリカ全体で見ると民主党、共和党支持の数は拮抗しているので、この比率は異常と言えます。私も昔サンフランシスコに住んでたことがあって、当時民主党支持だった私にはそれが当たり前だと思っていました。とにかく共和党支持の人に出会うことは稀でしたので、すべての会話は普通の人はみんな民主党支持で、共和党支持の人は人としておかしいよね、みたいな空気がありました。いや、ほんと恐ろしいほどバブルの中で生きてました、当時は。
で、コロナのパンデミックが起きるとあまりにもカリフォルニア州政府のやり方が専制主義的で反自由だったため、いろいろと考え直すことになった結果、私はどちらかと言えば共和党支持に移っていきました。すると困ったことに周りが圧倒的に民主党支持、それもどちらかというとではなく、断固民主党支持みたいな人達ばっかりだっため、政治や教育をはじめ、政府が関わることは周りと全く会話が噛み合わなくなってきたのです。
そうしたこともあって、2021年の終わりにコロナ対策などにおいて明らかになった市民の自由を尊重するフロリダ州に引っ越すことになりました。
移ってみて驚いたことの一つは、圧倒的に共和党支持の人が多いわけではないということでした。もちろんどちらかといえば、共和党支持の人が多く、その差は特にこの3年の間に広がったのですが、それでもカリフォルニアのように都市部で圧倒的な差があるというわけではなかったのです。
例えば、民主党と共和党支持の人だけに絞って、その比率を見ると、一番大きな都市であるマイアミのある郡の共和党支持率は46%、民主党支持が54%です。つまり、ランダムに2人に出会ったら1人は共和党、1人は民主党支持だということです。
私の住むサラソタの場合は共和党支持の人が多いのですが、それでも63%ほどで、民主党は37%ほどです。
さらに車で1時間ほど北に行くとタンパがあるヒルズボロ郡があるのですが、そこは共和党支持の人が49%、民主党は51%といった具合です。
もちろん、圧倒的に共和党支持の人が多い地域もあります。ウォルトン、ラフィエットといった地域は共和党支持の人が8割ほどだったりします。
ただこうした地域は基本的には田舎または郊外地域であり、それはカリフォルニアでも同じ傾向があります。こうした地域には保守的な人が多いため、全米を通して共和党が強いという傾向があります。
カリフォルニアとフロリダの違いとして大きいのは、都市部、大都市、中都市地域において、圧倒的に民主党なのがカリフォルニア、そして拮抗しているのがフロリダだということです。
実はこれは住んでる人達に大きな影響を及ぼします。
前述したように、私が若いときに住んでいたサンフランシスコのような地域では、みんなが民主党支持です。そのためにそれ以外の視点が普段の会話や議論に持ち込まれることがありません。エコー・チェンバーという言葉がありますが、政治や教育を含め、政府が関わることに関しては基本的にみんな同じ考えを持っていて、その同じ考えをみんな口に出し、それをお互いが納得し合うという環境です。
そして、共和党的な考え、例えば政府を小さくするべき、個人の自由を政府から守るべき、社会正義などのイデオロギーを学校で教えるべきでない、自国の国境を守る、保守主義、といったものを話に出そうものなら、論理的な議論となるのではなく、感情的に攻撃されることになります。
逆に、フロリダのマイアミやタンパ、オーランドといった都市では民主党の人も共和党の人も同じくらいいます。ですので、みんな共和党だよねという前提で普段の会話がすすむことはありません。もちろん気心がしれている仲間の場合は別ですが。
なので、考えが違う人が自分の属している何らかのグループにいることも普通ですし、それだからといって異常もの扱いされることもなければ、ハズレ者にされることもないのです。ただ一人の大人としてその意見を尊重されるだけです。
繰り返しますが、田舎地域にいくと状況は違います。
アメリカは2極化していてそのことが問題だとよく言われますが、本当の問題は例えばテックの中心地シリコンバレー、ハリウッドのあるロサンゼルス、そして金融、メディアの中心地ニューヨークと言ったアメリカ、または世界の主要地域や都市が極端に民主党支持に寄っていることこそが、健全な民主主義には問題なのではないかと思うのです。
そもそも国単位で見たとき2つの政党が拮抗しているときに、サンフランシスコのような地域では市民の大半が片方の支持に寄っているというのは、あきらかに自然ではなく、何らかの洗脳システムが働いているのか、それとも独裁体制の国のような厳しい検閲がしかれているのではないかと疑ってしまうくらいに異常なことだと思います。