子供たちの学力低下を招いた根拠のないコロナ対策

アメリカでは子供たちの学力が落ちています。

例えば去年には、子供たちの読解力と数学力がこの数十年の間で最低を記録したということがニュースにもなっていました。(リンク

これはアメリカの教育省の傘下組織であるNAEP(The National Assessment of Educational Progress)が定期的に行っている「NAEP long-term trend (LTT) reading and mathematics assessments」と言われるテスト結果に対する評価レポートを元にしたものです。

こちらのレポートによると。13歳、日本だと中学校2年生にあたる生徒たちの2023年度のテスト結果は2020年度にの比べて、読解力で4ポイント、数学で9ポイント低下したとのことです。

さらに人種別のデータもあるのでそれを取ってきて見てみました。

Reading (読解)

まずは「読解力」に関するものですが、どの人種でもテストの結果が落ちているのがわかります。

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ただ人種によって落ち方には若干差があります。こちらが人種ごとに2020年から2023年にかけてスコアがどれだけ落ちたのかを表したものです。

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黒人と複数の人種の混血の子供たちの学力が他の人種に比べてより低下しています。

下のチャートにあるように、もともとアジア人の成績は他の人種に比べて圧倒的に高い傾向がありました。その後に続くのが白人です。

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どの人種も低下していますが、他の人種に比べてより大きな黒人の読解力の低下はさらなる人種間の差を作ってしまうことになっています。

Math (数学)

こちらが数学ですが、どの人種も低下しています。

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こちらは読解力に比べ、それぞれより大きなスコアの低下となっています。

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こちらももともと人種間で大きな差があったのですが、黒人やネイティブ・アメリカンの子供たちは他の人種に比べてよりスコアに差がつく結果となってしまいました。

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学校閉鎖による子供たちの学力低下

この学力低下の大きな原因は、先ほどのNPRの記事(リンク)にも書かれていますが、2020年に始まったコロナパンデミック下で起きた学校閉鎖です。

もちろんこれにはさすがに驚く人はいないと思います。

学校閉鎖中はZoomのようなリモート環境でPCの画面を見ながら学ぶことになるわけですが、それは子供たちにとって大変です。PCやタブレットの画面を見ていれば他のアプリやゲームに気が散ってしまうでしょうし、そもそも授業に集中するのは相当難しいでしょう。

そうしたときに特に共働きの親や、リモートで働くことにはいかなかったりするいわゆるブルーカラーと呼ばれる肉体労働やサービス労働に携わる中低所得者の親たちが子どもたちへのサポートを提供するのは無理があるでしょう。

その結果、学校に戻って来なくなる子供たちも出てきましたし、授業に追いつけなくなる子供たちのたくさん出てきました。

例えば、以下はマッキンゼー・コンサルティングが2021年の7月に出していたレポートによると、子供たちの数学や読解力は当時すでに4、5ヶ月ほど遅れが出ているとのことで、その遅れ方は人種、親の収入などによって大きく違いが出ているとのことでした。

学校閉鎖が始まったのは2020年の3月頃ですが、すでにその数カ月後には3ヶ月ほどの差が出ていて、その翌年には5ヶ月の差が出ていたとのことです。

まったく恐れる必要のなかったコロナ

ここまで話すと、確かに子供たちの学力が低下したのは問題だが、それでも彼らが学校へ行っていれば感染が拡大し、彼らは死亡したり重症化したりしたかもしれない、学力を取るか命を取るか、難しいがしょうがない選択だったと言う人達がいます。

しかし、今回のコロナは子供にはほぼ何の負の影響はないことがわかっています。

こちら(リンク)は38カ国の年齢別の感染した場合の致死率を調べた結果ですが、それによると、19歳以下の人たちの致死率は0.0003%、死ぬ可能性はほぼゼロに近いものでした。

こういう話をすると、当時はそんな事はよくわかっていなかったと言い出す人たちがいますが、それは嘘です。

かなり早い時期から、このコロナは子供たちにほとんど影響ないことはわかっていました。以下は私が2020年の6月にツイートしたものです。

すると今度は、学校閉鎖したのは感染を抑えるためで、子供たちから大人、特にお年寄りへの感染を防ぐためにだ、という人たちが出てきます。

しかし、これもかなり早い時期からわかっていたことですが、実は子供から大人へ感染したケースはほぼありませんでした。

科学的には学校を閉鎖することはコロナに対する対策としては全く意味が無いということがかなり早い時期からわかっていたのです。

もちろんサイエンス教的に「科学的」と言っているのではなく、データを使って仮説を検証していくというサイエンスの手法に沿うという意味で言っています。

そして学校閉鎖をすれば子供たちの学力は下がり、それは主に中低所得者、人種的マイノリティに不利な形で起きるということも早い時期からわかっていたのです。

政治的な理由で学校閉鎖を続ける

しかし、アメリカの場合は州によって、特に民主党寄りの州はいつまでもだらだらと学校閉鎖を続けました。その中でも私が当初住んでたカリフォルニアはもっとも対面授業の時間が少なかった州でした。

アメリカでは民主党寄りの州が学校閉鎖をいつまでも続け、比較的早いタイミングで学校をオープンして対面授業に切り替えた共和党寄りの州政府に対して「子供殺し」だとか「おばあちゃん殺し」などと罵倒し続けました。

以下は2020年の9月から2021年の4月までの期間で、左側のチャートは対面授業が100%であるクラスの割合、右側はリモート授業が100%である割合の変化を表したものです。

赤系の色が共和党寄りの州(2020年の大統領選でトランプが勝った州)、青系の色が民主党寄りの州(同じ選挙でバイデンが勝った州)です。

2つのタイプの州の間に大きな差があるのが見えます。

これが私の家族がカリフォルニアからフロリダに引っ越すことになった大きな理由でもありました。

そしてこの民主党寄りの州でいつまでも学校が閉鎖されていた大きな理由が、全米教師組合の影響です。この組合長の人はアメリカのパンデミック対策のガイドラインを作る機関であるCDCや州政府に対して様々な圧力をかけ続けました。(リンク

2021年の夏以降になっても、全生徒のワクチン摂取、全生徒のマスク着用、温度検査、感染者が出たときの報告システムなど、感染対策が完全にできていればオープンしても良い、などと基本的にはオープンさせないことを主張し続けたのでした。

政治化したクラスルーム

子供たちの学力低下の最も大きな原因は学校閉鎖だと思いますが、他にもいくつか原因はあります。

それは2020年から2021年にかけて学校では政治運動が特に活発になりました。わかり易い例では、黒人差別に対するBLM運動、性的マイノリティの権利を謳うLGBT運動、などです。

これも特に民主党寄りの州で、小学校でも中学、高校でもクラスルームを活動家にしてしまう左寄りの先生たちが後を絶えませんでした。さらに学校には、DEI(Diversity, Equity, Inclusion / 多様性、公平性、包括性)担当の人が雇われ、そうしたトレーニングや教育に時間が割かれることとなりました。

子供たちから数学を取り上げる政府

また、カリフォルニアのようなかなり左によっている州では最近高等レベルな数学を生徒から取り上げる動きがあります。

例えば、公立中学校から代数幾何のカリキュラムが失くなり、さらに高校では微分積分が必修ではなくなりました。(リンク

その理由は、数学、とくに微分積分のような高度な数学では人種間での差が大きくなってしまうため不公平であり、これは先ほど取り上げたDEI(Diversity, Equity, Inclusion / 多様性、公平性、包括性)的には問題なためです。そこで、そういった差が目に見えないようにするために高度な数学を公立の学校で教えるのを止めてしまおうという流れです。

こうした動きはカリフォルニア州だけでなく、他の民主党寄りの州でも見られます。

DEIとは聞こえはいいのですが、結局は政治的なものです。そのアイデアや理想とするものは、たとえば「公平性」1つとってもその意味するところは人によって、文脈、背景によって変わってきます。ましてやそれを実現するための政策や学校レベルでの施策となると、それこそアメリカのように様々な人種、文化が入り混じっている社会においては、何か明確な一つのものがあるというわけではありません。

しかし、DEIのような言葉に流され、肝心の子供たちの学力が低下してしまうのは残念です。というのも、カリフォルニアの公立学校で育っていく生徒たちは、いずれ大学、社会に出ていきます。そこでは好きか嫌いかに関わらず、数学をしっかり勉強してきた世界の様々な場所からやってきた生徒たちとの競争にさらされるのです。

大人たちは声なき子供たちのことをほんとうに考えることができるのか

コロナへの行き当たりばったりな対策、またDEIなどのような政治的な対策によって、子供の学力が低下、もっというと子供の将来に対して負の影響を与えることになってしまいました。

こうした影響は取り戻せないものです。一度学校での授業に遅れてしまえば、一生苦手意識を持ってしまうことになります。たいていの学校ではそうして遅れた生徒たちの学力を取り戻すための仕組みを持っていません。多くの子供達にとって、彼らが逃してしまった学力は二度と戻ることはないのです。

当時から学校閉鎖に反対する声はありました。実際日本やヨーロッパではたいていの学校は対面授業を実施し続けました。しかしアメリカの場合は特に民主党寄りの州ではいつまでもだらだらとリモート授業を続けました。

マスクに関しても同じです。民主党寄りの州では効果がないと言われていたマスクも保育園から大学までずっと強制が続きました。

こうしたときに思うのは、民主主義のシステムは投票権のない彼らの声をほんとうに拾えているのかということです。

コロナにしても、DEIにしても、大人の都合で、つまり大人が自分たちの持つ政治的な信条や「いい人」のふりをしたいという中途半端な考えのもと下した判断によって、かんじんの子供たちは学力の低下という形で犠牲になってしまったのです。

民主主義というシステムの中で生きる私達には、投票権のない子供たち、そして先祖たち、つまり声なき人たちの利害に対してもっと思いを寄せることが求められるのではないでしょうか。

以上。


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